みなさんおにぎりの具材は何を思い浮かべますか?ツナマヨでしょうか、昆布でしょうか。いやいや梅干しでしょ。こんなおにぎりのスタンダード具材の中でもやはり強いのは
サケ(鮭)ではないでしょうか。
あなたはこの魚をサケと呼びますか?シャケと呼びますか?「さけ」と「しゃけ」の差はどこにあるのでしょうか。答えは物凄く単純な物なんです。
サケ(鮭)の語源
サケという単語そのままの意味
鮭という魚は現代においても色々と加工されて販売されていますよね。鮭おにぎりでしたり、ふりかけでしたり、缶詰めでしたり・・・そこにある共通点がある事にお気づきですか?
身が裂けているんです。鮭の身は非常にほぐれ易い(裂けやすい)ことからサケという呼び名になったと言われています。ではこのサケという言葉はシャケとも表現されていますがどこで二つの言葉が現れたのでしょうか。
シャケはアイヌ民族の言葉
サケと言う言葉は前述通り、「身が裂けやすい為」でありますが、現在の北海道に住んでいた先住民アイヌ民族は鮭の事を「シャケンベ」と呼んでいました。
アイヌ民族の住む地域ではシャケンベが非常によく捕れる地域でかつ米の栽培は難しい地域です。そこで江戸の役人が蝦夷に来た際、アイヌのシャケンベと江戸で流通網が安定している米を交換する事になります。
そして江戸にシャケンベが安定して流通する事となり、江戸には「サケ」と「シャケンベ」の両方の呼び名が入り混じるようになります。
そのシャケンベが次第に省略され「シャケ」と呼ばれるようになり、サケとシャケが混じったままの言葉の文化が現在にも残ったままになったという事です。
鮭の登場文献
鮭の文献は奈良時代に遡る
常陸風土記(ひたちのくにふどき)という文献があります。現在で言う茨城県にあたる場所になります。ここの文献に
「河に鮭をとるによりて、改めて助川(すけがわ)と名づく。俗の語に鮭の祖(おや)を謂ひてすけと為す」
という一文があります。ここでわかることは鮭の事を少し訛ってスケと呼んでいたことが分かります。また鮭が捕れる川の事をこの事から、助川(すけがわ)と呼んでいました。
平安時代の文献に登場
延喜式(えんぎしき)という平安時代の法律の様なものを書きしるした文献があります。この文献は平安前期、10世紀頃に朝廷から出版された文献になります。言ってみれば朝廷の運営方法マニュアルです。ここでも鮭が登場していて
伊豆は鮭の干物を120匹 納めなければならない。
と記されています。そして振り仮名できちんと「サケ」と書かれています。また実際の文章では鮭一二十隻と書かれており、鮭の干物1つを「1隻」と呼んでいたことが分かりますね。
サケとシャケ呼び方まとめ
- サケは身が裂けやすい魚の為サケと呼ばれるようになった
- シャケはアイヌ民族の鮭の呼び方「しゃけんべ」からきている
- アイヌの鮭と江戸の米の物々交換で「しゃけんべ」が江戸に流入
- サケとシャケの言葉が入り混じった状態で現在に至る
という事になります。
この事から、「サケとシャケの差は何?」といった疑問や「サケとシャケの呼び方で正しいのはどっち?」という疑問へのアンサーとしては
どっちも正解という事が言えます。サケの言葉が人によってシャケに聞こえて始まったなどではなくそもそも別の地域で別の呼び名で存在していたという事です。
一点謎が残るとすれば、偶然なのか文献に残らないローカルな故事でサケという呼び名がアイヌに伝わったのか、また逆にアイヌではしゃけんべという呼び名がある事が本州へ伝わったのか
どちらか分かりませんが、両呼び名ともどこか似ている響きがあるということですね。これが全く発音が似ていない言葉だったらどちらかの呼び名は現代では風化し、消えていたのかもしれません。
ちなみにどうでもいい事かもしれませんが、パソコンでサケでもシャケでも変換すれば「鮭」の漢字が出る事からやはり「どっちも正しい」の裏付けになる事を末筆させていただきます(笑)