知っているようで知らない。たらい回しの語源を深く解説

たらい回しにあう。

単純にこの言葉を聞くと、ネガティブなイメージがわきますよね。現代における「たらい回し」の意味合いを考えると

あちこち振り回されて落ち着かない様な、翻弄されているような、もどかしさを感じる言葉だと思います。

しかし日本語とは不思議な物で、時代の流れで全く意味が変わってしまいます。正確にいうと解釈にずれが起きて本当の意味を忘れられているという事です。

さっそく「たらい回し」の語源を知って本来の意味を取り戻しましょう。

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そもそもたらい回しの語源とは

「たらい回し」とは江戸時代に盛んに行われていた足でたらいを回す曲芸の名前でした。

曲芸師は寝転んだ状態で足だけを使いたらいをくるくると落とさずに回す芸を披露していました。

仰向けに寝て足でたらいを回す芸が語源だった

披露していたものは仰向けに寝転び足を使って落とさずにたらいを一回転させたり、曲芸師同士が足だけでたらいのキャッチボールを行うなど高度な技術が必要な技でした。

さらに曲芸師が次の曲芸師へたらいを回しながら受け渡すことを繰り返し行う芸もありました。

次から次へと回してたらいが変わっても、自分が回す足は変わらない様子が語源となりました。つまり周りの環境が変わっても、自分自身が置かれている状況に変化はないという事ですね。

洗濯板とアルミでできたたらい

たらい回しの意味の変化について

もともとは曲芸の名前だった「たらい回し」ですが、実際の芸の様子から物事や人を次から次へと順送りにするという意味で使われるようになりました。

さらにたらいをいくら回しても中身は空のままという様子から次から次へと受け渡しても中身は変わらないという意味もあるようです。

本来は観客を笑わせための娯楽である曲芸が語源となった「たらい回し」ですが、本来の芸の目的である喜びや笑いといった意味で使われる事はありません。

面倒事や責任の押し付けや合なすり付け、逃れ合いなどといった悪い意味で使われる事が多いようです。

さらに今と昔で言葉として大きく意味が変わるような使い方の変化があります。

昔は他の人に順送りする時に使った

昔は曲芸師が仰向けに寝転んだ状態で足だけを使いたらいを回すといった芸から、自らが物事や人を順送りにするときの言葉として使いました。

つまり自らがたらいを回していた曲芸師側となり、物事や人を他の人に渡す時の言葉として使いました。

本来ではたらい回しをする側が使う言葉であって、たらい回しに合う側は使う言葉ではないのです。

ですが現在では意味が悪いことから自らがたらい回すといった言葉を使う事が減りました。

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今は自分が順送りされる時に使う

現在では自らをたらいで例え回される様子を表した意味として多く使われています。

つまり『たらい回しにされた。』という使い方をするので、昔と全く逆の意味で使われるようになったのです。そもそも「たらい回しに」の言葉の後に「する」が付いて自分主動であった言葉が「される」に代わり他人主動の言葉に変わっていますね。

たらいを回す人が主役ではなく、たらい側が主役と変わってきています。

では、たらい回しの使われ方の例文をご紹介します。

  • 戸籍変更の手続きで役所を訪れたが、いろんな窓口でたらい回しにあい懲り懲りな思いをした。
  • 警察署で免許更新をしたのだが、たらい回しにされて時間がかかってしまった。
  • 家電が壊れてしまったので修理を頼もうと購入先の会社に連絡したが電話でたらい回しにされた。

次から次へと回されて結果何も変わらない時は、ただただ時間だけが過ぎて心身ともに疲れてしまいます。それに対して悪意があったかのように「たらい回し」という言葉を使うようです。

たらい回しは医療用語でも何でもない

「たらい回し」とは面倒な事や責任などを受け渡す時に使いますが、最近では数々の病院で患者の受け入れが不可能の時にも使われるケースが最も多いと思います。

実際に患者の身柄が病院から病院へ受け渡されるということはなく、患者を搬送中に受け入れ可能か確認する際に次から次へと断られる現状を「たらい回し」と表現しているようです。

なのでこの「たらい回し」とは実際に回されているわけではなく、受け入れ拒否の病院に搬送した際、何らかの理由により対応できず他の病院へ受け渡される患者を予想したかのような表現です。

決して医療用語として使われているわけではなく、受け入れ拒否をした病院側を非難する言葉として「たらい回し」という表現が使われていますね。

病院が悪意を持って受け入れを拒否したように受け取れる表現となっているのが現状です。

ですが病院側としては、現実に受け入れが困難になってしまう理由があります。決して医師たちが自分の都合で受け入れを拒否しているわけではありません。

例えば患者の治療中に他の患者の受け入れをしても、すぐに治療を行えなかったり、人手不足やベットに空きがないなどのやむを得ない理由があるのです。

このような受け入れ困難な病院により搬送に時間がかかってしまい、治療が遅れたせいで後遺症が残ったりそのまま手遅れになってしまったなどの事実が問題視されています。

この事実をテレビやインターネットサイトなどの一部報道で病院側は「たらい回し」という表現で非難されてしまっています。もちろん病院側はこの悪意ある「たらい回し」という表現は適切でないことを反論しています。

「たらい回し」という受け取る側が批判されているように感じてしまう可能性がある言葉は何とはなしに雰囲気で使うのではなく、しっかり意味を理解し適切な使い方をしていきたいですね。

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