注射器の起源から、改良や対策を重ねてきた現在までの変遷!

現在では、医療現場で必要不可欠になっている、医療器具の注射器。

用途は予防接種や、鎮痛・解熱、インスリン注射など様々ありますが、
いったい注射器の使用はいつからだったのか。

開発したのはどのような人物だったのか。
注射器が開発された時の形状から現在の形状に至る、注射器の様々な起源、変遷について調べてみました。

現在の安全性の高い注射器となるまでなは、様々な問題が出現したため、
長い年数をかけて改良を重ねて現在の注射器となっていきます。

では、その注射器の起源ともなる頃から、現在までの変遷について紹介していきます。

スポンサーリンク

注射器の起源、それはパーツから始まる

注射器より先に注射針が発明されていた

1844年にアイルランドの医師フランシス・リンドが、中空針という注射針の起源とも
いえるものを発明し、皮下注射を行ったといわれています。
中空針というのは、針の中心に空洞をつくり、簡単にいうと、針を筒状にしたものです。
この時はまだ注射器は発明されていませんが、この中空針により、フランシス・リンドは
神経痛の治療のための、鎮静剤を皮下注射で投与していたということです。

針の後にきた、注射器の誕生

1852年にフランスの医師チャールズ・プラヴァーズが、中空針よりも
細い針を先端に付けた、世界初の皮下注射器を開発しました。
これが注射器の起源となります。
この注射器の元となったものは浣腸器だそうです。
そして、この開発された皮下注射器は金属製で、薬液の注入にはネジを回しながら
注入作業をしなければならないため、両手で操作することになり
使い勝手があまり良くなかったようです。

注射器の改良は当然起きる

1853年にイギリスの医師アレクサンダー・ウッドが、注射器をネジ式のものから、
現在使われている注射器の原型である、ピストン式の注射器に改良しました。
そして神経痛の治療のために、患部にモルヒネを注射し、鎮静剤として効果があることがわかったそうです。
バットに入った一本の注射器

注射器が日本で使われ始めたのは江戸時代

江戸時代は鎖国政策を行っていましたが、西洋諸国の中でオランダだけが、
通商を幕府に許されたため、オランダの色々な学問(蘭学)が流行しました。

西洋医学も同様にオランダから伝来したのですが、その内容は主に外科に関するものだったそうです。

そういう中で注射器は、1865年頃にオランダから長崎に伝来したといわれています。
同時に、注射の専門書も書かれるようになりました。

この時に伝来した注射器は外筒がガラス製で、薬液の注入はネジ式のもので、
注射器の起源となったものと同じ形状のものでした。

注射が治療法として使われるようになったのは、1900年代に入ってからで、
サルバルサン(梅毒の治療薬)の発明がきっかけだといわれています。

外筒も内筒も、全ガラス製の注射器が日本に輸入されるようになったのは
1900年(明治33年)以降でした。そして日本国内でも注射器が製造されるようになったのです。

スポンサーリンク

感染の発生で更なる進歩へ

アメリカで原因が明らかな肝炎が大発生

アメリカでは1950年代後半に、肝炎が大発生し、この原因は注射器、注射針の
再使用のためといわれました。

同様に日本でも昭和23年(1948年)から、集団予防接種、ツベルクリン反応検査などを受けた方が、その後B型肝炎やC型肝炎に感染し、現在も問題となっています。

これは100人以上の集団単位で予防接種をしたため、注射器を使い回したのが原因とされています。

現在では考えられない事例であり、感染された方はとても苦しい思いをされていると思います。そして昭和30年代(1954年~)には、院内感染が発生し始めました。

なぜでしょうか。発明された道具には想定されていなかったリスクが付きまとうのは常なんですね。

感染の原因ともなった消毒法

この頃までの注射器は、使用後に洗浄し、煮沸消毒をしていました。

しかし、消毒では病原菌は処理できても、ウイルスなどは完全には処理できないため、
感染に繋がってしまったのだと思います。

それに対して、まだ行われていなかった滅菌という方法では、病原菌だけではなく、
ウイルスなども全てを死滅させることができ、無菌状態にすることが出来るのです。

このアメリカや日本での感染問題が発生し、その後、感染予防に対する意識が高まり、
また注射器が進化していく要因になりました。

リスク徹底排除の結論進化

現在の注射器は、ほとんどが使い捨てのディスポーザブル製品です。

世界中で、注射器の使用による感染防止のため、これまでの煮沸消毒から、
滅菌できる方法の開発が進められました。

色々と開発をすすめ、ウイルスが死滅するまで試行錯誤を重ね、1844年にフランスのパスツール研究所で、圧力鍋の原理をヒントに、高圧滅菌器が発明されました。

高圧滅菌器は、高圧、高温に耐えることができる、全ガラス製の注射器の滅菌に適していることから、世界に広まり始め、やがて日本の医療現場で普通に使用されるようになったのは、1974年(昭和49年)頃からです。

その前に日本に輸入されていたのですが、数が少なく、一部の医療現場でのみ使用されているのが実情でした。

そして1952年には、アメリカでプラスチック製の使い捨て(ディスポーザブル)注射器が作られるようになり、日本に輸入されたのは、高圧滅菌器が使用されるようになった1974年(昭和49年)になります。

現在でも、全ガラス製の注射器を滅菌しながら、使用している病院やクリニックも多いですが、使い捨て(ディスポーザブル)のプラスチック製の注射器を使用しない病院やクリニックは無いといえる程に増えました。

その使い捨て(ディスポーザブル)注射器は、まず滅菌された製品を加熱密封した後、さらにパッケージ(個別包装)ごとに滅菌している画期的な製品で、このことにより注射器の使い回しや、滅菌されていない注射器を使用することがなくなり、安全で衛生的に使用できるように進化していったという事です。

使いまわさなければ感染はあり得ないという究極の手法ですよね。

注射器起源、進化遍歴のまとめ

  • 注射器の起源は、近世ヨーロッパの時代で、注射器より先に注射針の発明が先だった。
  • 世界初の注射器を開発したのは、19世紀のフランスの医師で、金属製のネジ式だった。
  • それをピストン式の注射器に改良したのは、イギリスの医師だった。
  • 日本に注射器が伝来したのは、江戸時代の後期で、外筒がガラス製で、内筒はネジ式だった。
  • 全ガラス製の注射器が日本に輸入されるようになったのは明治の時代で、国内でも製造されるようになった。
  • 注射器、注射針の再使用のため、アメリカで肝炎が大発生した。日本でも集団予防接種などでの、注射器の使い回しにより、肝炎の感染があり、院内感染も広がった。
  • この感染の拡大により、それまでされていた消毒法が見直されるきっかけになった。
  • 世界中で、感染が発生していた注射器の使用による感染防止のため、煮沸消毒から、滅菌法に変化していった。
  • 高圧滅菌器の発明により、全ガラス製の注射器を無菌状態にすることが可能になった。
  • 個別包装された、滅菌済みの使い捨て(ディスポーザブル)のプラスチック製の
    注射器も作られるようになり、現在多くの病院やクリニックで使用されるようになった。

注射器の起源から、様々なことがあり、現在の形状、材質になったことが、わかって頂けたでしょうか。

注射器の歴史は諸説色々とあり、全部が詳しくは調べることは出来ませんでしたが、
少しでも起源をお伝えできていれば幸いです。

現在は、「痛くない注射」を目指して、予防接種やインスリン注射に使う注射針の研究もされているようです。

子供から大人まで「注射が好きだ」という人は、多くは居ないと思います。
もしかしたら、みなさん嫌いかもしれませんね。
でも、少しでも「痛くない注射」の研究が進み、現実になると良いですよね。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。